LIMS・ELN・CDSの違いとは?ラボ系システムを役割別にわかりやすく解説

研究や試験の現場では、LIMSをはじめとしたさまざまなITシステムが活用されています。
しかし「ELNやSDMS、CDSとの違いがよく分からない…」という声も少なくありません。
本記事では、それぞれのシステムの役割や得意分野をわかりやすく整理し、LIMSとの関係性や棲み分けのポイントを解説します。
導入検討中の方が、自社にとって必要なシステムを見極めるヒントになれば幸いです。
主要なラボ系システムの役割と特徴
ラボで使われる情報管理システムは、LIMSだけではありません。
目的や対象データに応じて、さまざまなシステムが併用されることも一般的です。
以下に、代表的なシステムの役割と特徴を簡単に整理しました。
システム名 | 目的 | 特徴 |
---|---|---|
LIMS(ラボ情報管理システム) | サンプルや試験データの一元管理 | 試験ワークフローを統合し、業務全体を管理 |
ELN(電子実験ノート) | 実験の自由な記録・考察 | 手書きノートのデジタル版。 構造は柔軟 |
SDMS(科学データ管理システム) | 生データや文書ファイルの保管 | 形式に関係なく全てのファイルを保管 |
LES(ラボ実行システム) | 実験手順のナビゲーション | SOP順守をサポートし、作業ミスを防止 |
CDS(クロマトグラフィーデータシステム) | 機器の制御とデータ処理 | 機器の測定やデータ収集・解析を自動化 |
これらのシステムは、それぞれ得意分野や管理対象が異なりますが、相互補完的に活用することで、より強固なラボ情報基盤を築くことができます。
LIMSとの違い:他システムとどう棲み分ける?
ELNとの違い
LIMSは、あらかじめ決まった試験業務を効率よく回す「構造化された業務管理システム」。
一方でELNは、研究者が自由に実験内容を記録し、アイデアや考察を書く「電子ノート」です。
- LIMS:定型的なルールがある検査業務や品質管理に向いている
- ELN:探索的な研究や創薬の現場に適している
SDMSとの違い
SDMSは、機器から出力される大量のファイル(PDF、CSV、画像など)を形式に関係なく一元保管することが目的。
LIMSは、試験データを「業務プロセス」として扱い、データの流れそのものを管理します。
- SDMS:保存が中心
- LIMS:実行と管理が中心
LESとの違い
LESは「実験者がどう動くか」をSOPに沿ってガイドする手順ナビゲーションツール。
対してLIMSは、試験全体の進捗や結果、履歴を俯瞰的に管理する役割です。
- LES:実験や操作の“手順”をサポート
- LIMS:業務全体の“司令塔”
CDSとの違い
CDSは、HPLCやGCといった分析機器と直接つながり、データの取得や解析を自動化するシステム。
LIMSは、そうした試験結果を含む試験全体の流れや結果の管理を担います。
- CDS:分析機器からのデータ取得と解析に特化
- LIMS:CDSからの結果を含む、試験プロセス全体の管理

どのシステムが必要か?目的・用途で選ぶ視点
業務目的から考えるシステム選定の目安
「これらのシステムが全部必要なのだろうか?」という疑問は自然ですが、導入の優先度は業務の目的によって異なります。
目的 | 向いているシステム |
---|---|
試験管理・品質管理 | LIMS |
創薬や研究の記録 | ELN |
機器のファイル保存・整理 | SDMS |
SOPに沿った作業の標準化 | LES |
クロマトグラフィーなど機器の制御・解析 | CDS |
複数システムを組み合わせるケースも多い
最近のLIMSには、ELNやSDMS、LESなどの機能を取り込んだ製品も増えています。
もしLIMSを導入する前に他のシステムを導入済みの場合、機能の重複が無いか、既存のシステムで解決できないか、確認してみると良いでしょう。
また、「万能のシステム」は存在しないため、複数のシステムを連携させて使うことも効果的です。
例えばLIMS+ELN、LIMS+CDSなど、それぞれの強みを活かした運用は一項の価値があります。
システムの連携についてはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
LIMSは「ラボ全体の業務フローを統合的に管理する」ための基盤システムですが、ELNやSDMS、CDS、LESなどはそれぞれに特化した役割を持っています。
したがって、導入時には「何を解決したいか?」を明確にすることが重要です。
目的やラボの業務内容に応じて最適なシステムを選び、必要に応じて組み合わせていくことで、ラボ業務はより効率的・高品質になります。
💬 お悩み・ご相談もお気軽に!
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ラボの状況に即した、無理のない導入アプローチをご提案します。